今冬は、温かくて雨の続くパリ。
気のせいか紫色の朝焼け、夕焼けによく出逢う。
最近少し日が長くなって嬉しいけど、またちょっと寒くなるそう。
それでも防寒して、公園に泥んこになりに行かなくちゃ。
雪が降ったらいいのにな〜。
家の窓から毎朝見える冬空。
12年前の今日、パリに憧れ、ひとり、スーツケースひとつ持って、
雪が降る街に、ぽつんと降り立った一人の少女。
どこに行くにも、四六時中、父からもらった一眼レフを首からぶらさげて。
茶色い髪に、たくさんのピアス、ポーターのバッグにタバコとフィルムを数個。
自分で決めて、たった一人でやってきた、映画でしか見たことのなかった街。
見るものすべてが新鮮で、パリの路地を歩くたび、人と出逢うたび、
シャッターを押して、日常の断片を切り取っていました。
当時は写真展などもしてたけど、数年経ち、絵を描くようになって、昨年、柿本ケンサクさん×半野喜弘さんが監督をされた、パリが舞台の映画「UGLY」。
窪塚洋介さんのお相手役の桃生亜希子さんが撮影したという設定で、
私が撮った愛しいその写真たちを使っていただく機会がありました。
半野さんから連絡をいただいたとき、
「パリに来たばかりの、写真家を目指してる女の子が撮ったような写真を探してる」と言われ、
長年封印していた、昔の自分のかけらを掘り起こすことに、なんだか突然ワクワクしました。
当時その写真を撮っていた頃、パリで友人たちと窪塚さんの出演するドラマを
レンタルしては(Youtubeもパソコンすらなかった)楽しみに観ていたのを思い出し、
あのときの、どうしようもなく、手探りで、ヨチヨチ歩きの19歳の私が、
子育てを楽しむ今の私の前に現れて、なんだか不思議な気持ちになりました。
今も生きててくれた写真たち、何度見ても、私は変わらず好き。だから嬉しかった。
私の原点。出発点。そこから12年、とことこと歩いてきた。
まだ映画は観ていないので、どのように使っていただいたのか、
映画を見ているだけでは気づかない程の小道具の一部かもしれませんが、
素敵な機会に感謝しています。ありがとうございました。
私にとっては、ステキなタイムカプセルになりました。
クレジットにも載せていただいているようです。
映画「AGLY」公式HP → http://ugly.theatre-tokyo.com/
宮崎で行きたかった場所のひとつ、旦那さんのおばあちゃんち。
「ばあちゃーん。」と、ぽかぽか暖かく心地のよいお庭には、
私の大好きな、おばあちゃんお手製の切り干し大根が、ハンガーに吊られてずらーり。
こんなに太い大根が、一本一本にお日さまのエネルギーをぎゅうっと吸って縮まって、
甘ーくて、おばあちゃんのようにやさしーい味になる。
おばあちゃんの切り干し大根、梅干し、そしてお味噌は、私たちになくてはならない元気の源。
お庭に積んであった薪を見てびっくり。
おばあちゃんは今も薪を燃やして毎日お風呂に入っているそう。
一人暮らしのおばあちゃん。
毎日毎日せっせと家仕事をして、友達と遊びにも行って、
丁寧に、日々を楽しくこつこつと生きるおばあちゃん。
いつもニコニコしてて、愚痴を言ってるのは一度も見たことがない。
何十年も変わらない生活。笑顔の年輪が少しずつ増えていくだけ。
しわしわのあたたかい手で、目を細めて娘をよしよし撫でてくれた。
5人の子供を産んだおばあちゃんに、昔の出産や育児のこと、いろいろ聞かせてもらって感動した。
おばあちゃんが、妊娠することを「赤ちゃんがお腹に入ったらね」と表現していたのが、
ものすごくかわいくて、ほっこり温かい気持ちで満たされた。
今回の滞在、暖房のなかなか効かない極寒の家で、娘をおんぶして、
洗濯を干したり、布おむつを洗ったり、離乳食作ったり。夜泣きで寝不足になったり。
機内食用に用意したBioのレトルト離乳食以外は、全部手作りでいつも通り玄米と野菜のご飯を作れた。
家事はお母さんたちに頼ってはいたけど、それでも手がガサガサになりながら生活して、
朝はお日さまに当たって遊んで、美しい夕焼けや、夜はお月さまや星を見て、
冬の寒さ感じながら生活すること、とっても楽しく、忘れられないものになった。
コンビニでは一度も買いものをせず、テレビも自分からは見なかった。
どちらもパリでの生活にはないもの。本当は中身はからっぽ。
そしてとても違和感を感じた、100円ショップや大型ドラッグストア。
便利なもの、楽しいものもあるけど、本当は、お店まるごとすべてが必要ないと思った。
便利ではあるけど地球を汚すもの、便利を通り越して在る意味がないもの、かたちだけのもの、
健康を謳って体を汚すもの、過剰包装、不自然な匂い、光、音、色、空気、ぜんぶ。
おばあちゃんの生活にも、パリでの私たちの生活にも、必要なものはそこにない。
こういう場所がこれからもどんどん増えていって、私の娘が大きくなったとき、
娘が子供を産むとき、この地はどうなってしまうのだろうと心から思った。
遠くに連なる美しい山と、そこまで延々と続く田んぼ、畑、川、緑、空が、
ビニールとプラスチックの山に茶色い川、黄色い空になってしまいませんように...
「暮らす」ということをとても感じた滞在でした。
「暮らす」という言葉は、私にとって、アパートやマンションではなく、
土の上、緑と共に生きる、屋根のある家のイメージ。
自然に感謝して、質素でも良い食材、旬の恵み、その土地のものをいただき、季節を感じ、
お日さまとお月さまに感謝し、生活の知恵を使って、規則正しく早寝早起きして、生活すること。
インターネットは使うけど、洗濯機や炊飯器は使うけど、
できる限り自然と共生する。今ある現実と共生する。
元気を、健康を、自然は私たちに与えてくれる。
この前買った本に、『ちゃんと暮らす。それがいちばんのおくすり。』とあった。まさに。
小さく温かなアパートでの快適な生活で、「暮らしている」つもりだった私は、
大きく寒い家で冬の厳しさを感じ、家族の温かさ、
「暮らす」ことの大変さ、改めて気づかされた素晴らしい時間でした。
そんなことを噛み締めながら、新年を迎え、おばあちゃんの作ったおいしいお餅をいただきました。
おばあちゃんの知恵袋から、ゆるやかに溢れる温かく優しいお話たちが、
テレビや騒音、街中に溢れる電子音にかき消されないように、守っていきたいと、思った旅なのでした。