2010/05/19

田舎


小学生の頃、母親と観に行った 高畑勲監督のジブリ映画「おもひでぽろぽろ」。
先日、なんの気なしに 仕事中に流してみたら、今の自分の心が反応し合って ぶるぶる震えた。
ちょっとオトナなストーリーで 当時は 映画館の中で退屈だった思い出しかなかったけど、
今観てみると、主人公と同じく、幼い頃の自分が ひょっこり出てきて、懐かしかった。

そして、20年前の映画の中で、主人公が田舎で"有機農業"について触れていたり、
自然と人間との共存を考えたりしていて、まさに今のタイミングで見る意味があったと思った。


「稲だってリンゴだってさくらんぼだって、生き物でしょ。一生懸命面倒見てやると、
 向こうだってその気になって頑張ってくれるような気がするんです。
 有機農業は、生き物自体が持っている生命力を引き出して、人間はそれを手助けするだけ。」


心に残った、主人公タエ子と農業を営むトシオの会話。

「都会の人は 森や林や水の流れなんか見て、すぐ自然だ自然だってありがたがるでしょ。
 でも、山奥はともかく、田舎の景色ってやつは みーんな人間がつくったものなんですよ。」
「人間が?」
「そう、百姓が。」
「あの森も?あの林も?この小川も?」
「そう。田んぼや畑だけじゃないんです。みんなちゃーんと歴史があってね。
 どこどこのひいじいさんが植えたとか拓いたとか。大昔から薪や落ち葉やきのこを採っていたとか。
 人間が自然と戦ったり、自然からいろんなものをもらったりして暮らしてるうちに、
 うまいことできあがってきた景色なんですよ、これは。」
「じゃ、人間がいなかったら、こんな景色にならなかった。」
「百姓は、絶えず自然からもらい続けなきゃ生きていかれないでしょ。だから、自然にもね、
 ずーっと生きててもらえるように、百姓のほうもいろいろやってきたんです。
 自然と人間の共同作業っていうかな。そんなのがたぶん田舎なんですよ。」
「そっかー。それで懐かしいんだぁ。生まれて育ったわけでもないのに、
 どうしてここが故郷って気がするのか、ずーっと考えてたの。」

私は、住まいは違うけど、宮崎県の田舎町にお嫁に行った。
初めて訪れたときは、まだ20代前半で、田舎に興味もなく、
ドライブ中に 畜産の匂いのする土地には、なかなか馴染めなかった。
それがいつの間にか、帰省を重ねると同時に、見渡す限りの果てしない緑の景色が大好きになっていった。
懐かしくて、昔と変わらぬ健康な自然の景色が 心地よくなった。
中途半端な田舎で育ち、中途半端に都会に憧れた私にとって、
導かれるように 自然のありがたさを知る、とっても大切な選択だったようです。


→ 映画「おもひでぽろぽろ」(高畑勲監督・119分)

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